制御盤に必要となる、制御機器を収納する箱状の容器である筐体(キャビネット/ボックス/エンクロージャー)。このうち、金属製の筐体はどのような工程を経てつくられているのでしょうか。金属製筐体の製作工程とその注意点、筐体板金業界が抱える問題に触れてみます。
制御盤の組み立てでは、筐体に取り付けていくところから始まります。では、機器を取り付けるための筐体はどのようにしてつくられているのでしょう。金属製筐体の製造工程の一例を紹介します。
このように多くの工程を経て製造される筐体ですが、実際に制御盤として製作されるのはここから先が本番です。このとき、筐体がしっかり設計されていなければ、その後の制御盤製作工程を止めてしまうことにもなりかねません。
筐体の設計時には、特に次のような点に注意しましょう。
板金加工時には、それぞれの工程に発生しやすい問題があります。代表的なトラブルとその対策は次のとおりです。
パンチプレス機による抜き(せん断加工)を行う場合、板厚方法に力が発生するため材料の肉逃げ(変形)が起こる場合があります。精度を要する穴は後工程で加工したり、穴同士を板厚の2倍以上離したりといった工夫が必要です。
また、抜きによって発生した縦バリが次工程でつぶれ、横バリとなった場合に穴寸法が変わってしまうこともあります。この場合、金型側にバリをつぶさないための逃がしを設けることで解決できます。
抜き加工で避けて通れないのが、材料のそりです。そりの大きさを決定する応力は、パンチとダイ(パンチの受け側)のクリアランス、金型構造によって異なりますが、そりを小さくする方法はあります。ストリッパの押さえ力を強くする、パンチの刃先を研磨し切れ味を向上させるなどの方法がそりの減少に効果的とされています。
曲げ加工の際も、板厚により圧縮と引張の応力が発生し、板端や曲げ部分に近い穴への材料逃げ、側面方向への膨らみなど、さまざまな変形が起こる可能性があります。
曲げ部分に近い穴に材料逃げが予想される場合、曲げ線上に逃がし穴をあらかじめ開けておくことで穴の変形を防ぐことができます。
また、曲げ線と曲げ線が接する角部分、曲げ線と外形線が一致するT字型の部分などは、曲げ位置と板厚の関係から材料の割れが発生しやすくなります。この場合も、曲げ線の交差部分や曲げ線の両端に切り欠き状の逃がしを設けることで、対処することができます。
溶接にもさまざまなトラブルが発生する可能性があります。代表的なスポット溶接の不具合には、打点欠損・はがれ・割れ・打点位置ずれ・圧痕(あっこん)異常などの発生があります。また溶接全般にある不具合として、溶融面積不足・溶け込み不足・バリ・散り・ブローホール・ピットなども同様に起こる可能性があります。
これらを防止するためには、スポット溶接の4大条件といわれる次の要素を適切に設定して作業する必要があります。
このように高い技術と精度が求められる筐体の板金加工ですが、業界が抱える問題も表面化しつつあります。
制御盤の筐体について、製作工程の流れ、設計時と板金加工時の注意点について紹介しました。
制御盤の筐体は、設計から板金、塗装まで多くの手間がかかっています。後継者不足・納期の問題といった時代背景を受け、標準品・既成品の筐体需要が高まっていくと予想されます。
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