盤用クーラーのノンドレン方式について紹介します。ノンドレンとはどういった機構なのか、どのような仕組みによりドレン水が出さないようにしているのか、そのメリットとデメリットを解説します。
盤用クーラーに限らず、多くの家庭用のクーラーには、冷媒の配管と一緒に水を排出するホースが付いています。英語で排出・排水を意味する“drain”から「ドレン」という言葉が使われます。排水用のホースをドレンホース、ここから排出される水をドレン水といいます。ドレン水はなぜ出てくるのでしょうか。
家の窓ガラスで考えてみましょう。外が寒い日、窓ガラスが結露して水滴がたくさん付くのを見たことがあるでしょう。これは低い外気温によって冷やされた窓ガラスにより、窓ガラス周辺の空気が冷やされ、含んでいる水分を水蒸気として保てなくなったためです。夏に、氷水を入れたグラスの表面に水が付くのも、同じ理由です。
空気は、多かれ少なかれ水分を気体(水蒸気)として含んでいますが、水蒸気として含むことができる水の最大量は温度と圧力によって決まっており、それを飽和水蒸気量と言います。一定の圧力の下では、飽和水蒸気量は温度に依存し、温かい空気はより多くを水蒸気として含むことができますが、温度が下がると飽和水蒸気量を超える分の水蒸気(気体)は凝縮し、水(液体)となります。これがドレン水の正体です。
クーラーは、温かい空気を冷却器(蒸発器)に通して冷やす機器です。クーラーの中では絶えず温かい空気が冷やされ、水蒸気として保つことができなくなった水分は、冷却器(蒸発器)表面に結露します。大きくなった水滴は流れ落ちてドレンパン(受け皿)に集められ、もしくは、直接ドレンホースで排水されます。ドレンホースによってドレン水を排出する方法をドレン方式と呼びます。
一方、ノンドレン方式とは、ドレン水が外に流れ出る前に処理し、ドレンホースの不使用を可能とする方法のことです。
外気温以下に空気を冷却している盤用クーラーでは、必ず結露は起こりますが、ノンドレン方式では、この水をどう処理しているのでしょうか。
家庭用のエアコンは一般的に、室内機と室外機とが分かれています。冷房時には、室内機側の熱交換器は冷却器、室外機側の熱交換器は放熱器となります。その間は冷媒配管でつながっていますが、そのほかにもう一本室外に通されている管があります。それがドレンホースです。家庭用エアコンの場合は、そのまま屋外に排水するように設置されています。
一方、盤用クーラーの場合はこれらが一体となっています。ただし、冷却側と放熱側は隔壁によって仕切られており、内外の空気は混ざりません。盤内の温まった空気は冷却器によって冷やされて盤内に吹き込み、盤外側の放熱器は外気によって盤外(室内)に熱を排出する仕組みになっています。コンプレッサー式クーラーの場合は冷媒配管とドレンパイプが、電子式クーラーの場合はドレンパイプだけが、盤内側から盤外側に通じています。
熱を排出する際の暖められた空気(排熱)を利用する方法を、ドライヤー式と呼びます。冷却器に結露したドレン水を一旦ドレンパンに貯め、吸水フィルターで吸い上げます。排熱をこの吸水フィルターに当てることで、ドレン水を気化させながら熱と水分を同時に排出します。
そのほか、ドレンパン内にヒーターを内蔵し、凝縮水が溜まった時だけ発熱させ蒸発させる凝縮水蒸発器式や、自然に水分を気化させて空気中に排出する気化式などがあります。
いずれの方式も、一旦凝縮して液体となった水を、気化させて盤外に放出するという方法になります。
ノンドレン方式を採用した盤用クーラーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
一方で、次のようなデメリットに注意しておかなければなりません。
ノンドレン方式の盤用クーラーは、床濡れの心配もなく排水のための工事も必要ありません。ドレン水の処理が難しい現場の制御盤にクーラーを設置する際は、ノンドレン方式を検討してみてはいかがでしょうか。
参考: