フロンガスがオゾン層を破壊するとして規制されたことを覚えている人は多いでしょう。それにより代替フロンが多く使われるようになりましたが、2015年からは代替フロンに対する規制も始まりました。代替フロンが規制される理由と、今後、冷媒ガスに使用できるとして注目を集めるガスについて解説します。
オゾン層破壊が問題になったことで最初に規制されたフロンガスは、現在「特定フロン」と呼ばれています。
最初のフロンガス規制、すなわち特定フロンに対する規制を受けて、代替フロンが開発されました。代替フロンは、それまで特定フロンが使われていた多くの場面で使用されるようになり、オゾン層への影響はなくなりました。一見、問題は解決したかのように思われましたが、今度は代替フロンが非常に高い温室効果を持つことがわかったのです。代替フロンの温室効果は、種類にもよりますが、二酸化炭素の10,000倍を超える物質もあります。そのため日本では、2015年から代替フロンに対する規制が実施されるようになりました。
代替フロンと呼ばれている物質は、HFC-134aやHFC-410aなどの冷媒ガス(HFC=ハイドロフルオロカーボン)です。特定フロンと同様に化学的に安定しており、安全性が高い特長を持つ一方、特定フロンとは異なりオゾン層を破壊しません。しかし、温室効果が非常に高いという問題があるのです。特定フロンも温室効果は高く、二酸化炭素の温室効果を1として温室効果を測る地球温暖化係数(GWP)は、およそ5,000から10,000という数値でした。ところが代替フロンの温室効果は特定フロンよりもさらに高く、GWPが15,000近いガスも存在します。なかには温室効果の低い代替フロンもありますが、それでもGWPは120程度ですので、環境への影響は決して少なくありません。
そのため代替フロンが大気中に放出されないよう、代替フロンに対する規制が行われています。業務用の冷凍/冷蔵機器などを中心に、代替フロンが漏れ出していないことを定期的に確認することや、破棄する際にはガスを回収し破壊することなどが義務付けられています。
オゾン層破壊効果のある特定フロンや、温室効果の高い代替フロンに代わり、フロン類以外の気体を冷媒として使用する動きを冷媒転換といいます。冷媒転換では、一般的には冷媒として使われていない気体を冷媒として使用したり、新たに開発されたGWPの低い代替フロンに転換したりしています。しかし現時点では、特定フロンや代替フロンに比べるとデメリットもあります。冷媒転換としてよく使われる物質を以下にご紹介します。
温室効果の原因となる気体ですが、特定フロンや代替フロンに比べればその影響は非常に小さく、冷蔵、冷凍ショーケースとしてすでに実用化されています。デメリットとしては、高圧にしなければならないため、機器の大型化や安全面での管理が必要になることが挙げられます。
CO2よりも温室効果が低いのが特長です。独特の臭いがあるため、特定悪臭物質であること、毒性があることがデメリットです。可燃性ガスとしても指定されているため、さまざまな方向から管理が難しい面もあります。
HFO(ハイドロフルオロオレフィン)(HFO-R1234yf)は代替フロンのひとつですが、GWPはCo2比1倍未満(IPCC第5次レポート2013年より)で、代替フロンとしては温室効果が非常に低いという特長があります。代替フロンHFC-134aに似た性質を持っています。温室効果がCO2に比べて若干高いことや微燃性であることがデメリットです。
温室効果の高い代替フロンに対する規制が2015年から行われました。これに伴い、これまでの冷媒ガスとは異なるガスを冷媒として使用する、冷媒転換の動きが起こっています。しかし冷媒転換として使われるガスにはデメリットも存在しており、まだ課題の残る状況となっています。
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