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    ドイツのモノづくり―マイスター精神が世界の製造業を変える

    精巧で正確なモノづくりといえばドイツ。それは世界中での共通認識で、日本でもそのイメージを持つ人は多いでしょう。こうしたイメージはどのような歴史のなかで生まれたのでしょうか。ドイツのモノづくりが歩んできた歴史から、その理由を探ります。

    精巧なモノづくりで知られる国ドイツ

    ドイツはモノづくりにおいて、どのような歴史を歩んできたのでしょうか。

    ドイツ製造業の歩み

    1885年、世界で初めてガソリンエンジンで走る自動車を生み出したのは、2人のドイツ人でした。今でも会社名、車種名として名前の残る、ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツです。今でこそ「ダイムラー社のメルセデス・ベンツ」としてひとつの会社になっていますが、当初彼らは別々にガソリン自動車を開発し、販売を始めたのです。それから10年も経たずして、同じドイツの発明家ルドルフ・ディーゼルにより、ディーゼルエンジンが誕生します。

    第二次世界大戦中には、ナチスによって液体燃料ロケット技術の研究開発が進められました。後に、スペースシャトルや人工衛星打ち上げロケットなどの宇宙研究分野へと活かされていくことになります。

    このようにドイツは、世界を牽引する技術力・開発力を持っていました。しかし第二次世界大戦後には東西ドイツに分裂、西ドイツのみが経済的に発展していくことになります。

    1990年、ベルリンの壁崩壊は世界のビッグニュースとして報じられました。しかしこれは同時に、ドイツ経済が低迷期に突入することを意味していたのです。旧東ドイツの影響により、ドイツ全体としての経済力の低下を招くことになりました。

    こうして一時期、経済の混乱と低迷に陥ったドイツですが、近年では急激な伸びを見せています。

    電線の基礎知識・規格と欧州の制御盤製造動向

    ドイツ経済が世界トップへ

    2004年ごろ、ドイツは「欧州の病人」と呼ばれていました。しかしわずか5年後には、「EUの優等生」「ひとり勝ち国家」といわれるまでに、経済復活を成し遂げました。ドイツの経済はどのような推移をたどったのでしょうか。

    NHK NEWS WEBに、ドイツ経済の軌跡を特集した記事が掲載されています。
    記事中のデータ、IMF(国際通貨基金)の資料を元にNHKが作成した「財政収支の対GDP比率の推移」によると、ドイツ財政は1990年の東西統一後、一時的に建設ブームに沸いたものの、1995年には統一の反動から大きく落ち込みます。しかしその後、次々と打ち出された経済政策が功を奏し、2010年代前半からは財政黒字に転じているのです。

    もうひとつ注目したいのが、世界銀行の資料を元に作成された「経常収支の対GDP比率の推移」です。GDP(国内総生産)における経常収支(国対国の収支を表す)の割合が、2016年にドイツは+8%と、EU加盟国のうち2番目に高い数字となっています。
    経常収支を金額で見ると、2015年のEU全体の経常黒字のうち79%をドイツが占めており、実に8割近くがドイツによって稼ぎ出されていることがわかります。
    全体では2016年に前年まで首位の座にあった中国を抜き、世界一となりました。こうしてドイツ経済は見事に復活を遂げ、EUでの、また世界での経常黒字大国となっているのです。

    ドイツの主要産業

    ドイツ経済が劇的な復活を遂げた背景には、自動車産業の発展があります。ポルシェ・フォルクスワーゲン・メルセデス・BMWなど、有名メーカーが多数存在するドイツは、自動車生産台数において中国・アメリカ・日本に次ぐ世界第4位となっています。

    また同様に好調なのが、製造業です。
    電気電子分野で世界的に有名なシーメンスも、ミュンヘンに本拠地を置くドイツ企業です。情報通信から医療、家電製品、インフラ事業まで手がけるシーメンスは、世界でも有数の巨大企業です。

    また、高圧洗浄機において世界トップクラスのシェアを誇るケルヒャー、電気シェーバーで有名なブランド、ブラウンもドイツの企業です。このほか、プーマやアディダスといった、スポーツ用品メーカーもドイツを本拠とする企業です。

    ドイツのマイスター制度

    ドイツが近年取り組み、世界からも注目されているのがマイスター制度です。

    職人を目指す人は、ゲゼレやワルツと呼ばれる見習い修行期間を経て専門知識や技術を身につけます。一定の資格を得た後、高等職業学校で教育を受け、マイスターと呼ばれるさらに上を目指す存在の受験資格を得ます。

    マイスターには、作業に必要な知識や技術だけでなく、次のような4つの能力も求められます。

    • 後輩を教育する指導力
    • 高品質なモノをつくる技術力
    • 新たなモノをつくり出す開発力
    • 会社の生産性を維持・向上させる経営力

    このようなドイツの取り組みは日本でも注目され、厚生労働省や民間団体などによる認証制度が発足し、日本の技術継承にも活かされています。

    ドイツは次世代のモノづくりへ

    このように育まれたドイツのモノづくり基盤は、次の段階へ進もうとしています。

    2011年、ドイツはインダストリー4.0という、製造業についての国家戦略を発表しました。この言葉には第4次産業革命という意味が込められています。

    IoTやサイバーフィジカルシステムの技術により、工場をスマート化、つまり工場全体をIoT化することで、より生産性が高くコストを抑えた製造を行うのがねらいです。

    インダストリー4.0の中核となるスマートファクトリーは、これからの製造業に大きな変革をもたらす技術として世界が注目しています。

    ドイツのモノづくりが世界を変える

    ドイツのモノづくりの変革についてご紹介しました。ドイツの製造業は、今や世界を牽引する存在となっています。またインダストリー4.0は、今後の製造業を変える可能性を秘めた、全世界が注目する取り組みです。近い未来、ドイツのモノづくりが、世界のモノづくりを変える日が来るかもしれません。

     

    参考:

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    総合カタログ35は、IT業界・製造業で使用される当社製品をすべて網羅し、設計者、開閉装置(スイッチギア)メーカー、データセンター事業者のニーズを満たします。世界中で幅広く使用されている産業用キャビネット・ボックス、分電・配電システム、温度管理システム、ITインフラストラクチャ製品ラインアップの詳細情報を、936ページにわたってご紹介しています。

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