制御盤の塗装剥がれや、擦り傷の補修方法をご存じでしょうか。制御盤の塗装剥がれをそのままにしておくと、キャビネットの寿命を縮めてしまいます。制御盤の擦り傷を簡単に補修する方法を紹介します。
制御盤の塗装補修方法を説明する前に、制御盤の塗装にはどのような種類があるのか見てみましょう。
それでは制御盤の塗装を補修するには、どのような方法があるでしょうか。実際の現場でありがちな、3つの事例から考えてみましょう。
人がよく触れる部分や操作スイッチの周りなど、繰り返しの接触によって塗装が摩耗している部分がある制御盤は、実際の現場でよく見る風景です。主に制御盤の操作パネルに多く見られます。
磨耗部分があっても、日常的に操作している(摩擦が与えられている)間は、錆(さび)はあまり進行しません。しかし、操作頻度が少なくなったときや、夏場の汗ばんだ手で触れたときなど一気に錆が進む可能性があります。
このように錆が進行してしまった制御盤は、パネルのスイッチや計器、パイロットランプなどを外し扉ごと再塗装する方法があります。塗装工場や自動車板金工場でも引き受けてくれる場合もありますので、問い合わせてみるのもいいでしょう。
フォークリフトの車体や、運んでいる荷物でこすってしまい、傷がついている制御盤も見かけます。本来、安全面からあってはならないことですが、十分な広さが確保できない工場では、フォークリフトの通路に制御盤が面していることもあるのです。また、レイアウト変更の際にぶつけてしまったり、ふだんと違う車両を使ったことによって感覚が狂ったりということもあります。
大きく変形してしまった場合は、電気的な安全面からも制御盤キャビネットの交換が必要です。しかし、フォークリフトの塗装が付着しているだけのような場合は、コンパウンドで磨くと落ちる場合があります。
現場で使用されている制御盤は、工具を携えながら操作することもあれば、日常点検やメンテナンスなどで傷がついていくものもあります。制御盤に傷がついたままでは錆が進行してしまうので、早めの補修塗装が必要です。
細いひっかき傷の場合は、タッチアップペイントで補修するという方法もあります。タッチアップペイントは、傷補修のための塗料で、線上に塗りやすいよう工夫された容器に入っていて、手軽に塗ることができるのが一番の特長です。
制御盤をタッチアップペイントで補修するメリットには、次のようなものがあります。
一方で、タッチアップペイントによる補修作業には、以下のデメリットや課題もあります。
IECの規格とは、IEC 61439に規定されている「腐食、絶縁、UVなどの要件」についてです。タッチアップペイントは応急補修の意味合いで販売されているものもあるため、要件を満たすことができない恐れがあるのです。
しかし、制御盤メーカー、特にキャビネットから手がけるメーカーであれば、最新の規格に適合した、腐食を防止できるタッチアップペイントが用意されています。
傷補修にタッチアップペイントを用いる際は、規格に適合した製品を使用することで、基準を満たしながら手軽に補修をすることができます。
制御盤は、その内部に収められている機器だけでなく、キャビネットの外装塗装も大切にすることで長持ちさせることができます。経年による傷や塗装剥がれは、必ずといっていいほど発生するものです。できるだけ早めに、そして状態に適した補修を施し、制御盤を長持ちさせましょう。
参考:
リタールの技術ライブラリ
「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。