制御盤の製作工程において、大きな比重を占めるのが盤内の配線作業です。制御盤の配線状態は設計者、作業者によって大きく変わり、製作コストや後々のメンテナンス時の優位性などにも影響します。制御盤の配線について、その重要性や作業における注意点、配線作業の今後の可能性などをご紹介します。
制御盤は、主に次のような流れで製作されます。
制御盤製作会社によって手法はさまざまですが、一般的にこのような流れで進められます。上記工程中、設計工程を除いた実作業において、最も作業者の手腕が問われるといわれているのが配線作業です。
配線図は、どことどこが接続されているかという点が、図面での見やすさを重視して描かれています。配線を実際のレイアウトに合わせて図面に起こしても、配線ミスのリスクが高まるだけだからです。
そのため実際の盤内での配線作業では、ある程度の理論はあるものの、どこを通してどのようにきれいに配線するかは作業者次第となる部分が大きいのです。
また制御盤の配線は、後の保守・保全の際に、担当者が見てわかりやすいようメンテナンス性も考慮されなければなりません。機械トラブルなどの際、盤内の配線が乱雑になっていると、配線図で原因部分を特定し接続を確認しようとしても、線の追跡に時間がかかり、ダウンタイムが大きくなるなどの損失が生じてしまいます。
このように制御盤の配線作業は、その出来ばえが後々まで影響するため、非常に重要な工程なのです。
制御盤の配線として電線やケーブルのうちで、よく使われるものをご紹介します。
これらの電線・ケーブルを、電流の大きさを考慮したうえで、配線の取り回しなどに合わせて使い分けます。また現在ではIoT化が進み、通信用LANケーブルなども広く使われるようになっています。
制御盤の配線では、限られたスペースの中で、電線に負荷をかけずに配線することが必要です。電線に負荷がかかると、発熱などのトラブルにつながります。電気工事の原則として、「ケーブルを曲げるときは、屈曲部の内側の半径をケーブル外径の6倍以上にすること」と指導されているように、電線を曲げるときに曲げ半径が小さくなりすぎないよう注意が必要です。
また圧着端子を付けてから電線を曲げ、制御盤内の機器同士を接続すると、電線がバネのように反発する力が発生し、機器の端子部や取付部に負荷をかけてしまうことがあります。硬めの電線を小さく曲げる際は、先に電線を曲げクセを付けた後で、取り付ける機器に合わせ端子を圧着するような工夫をすると、耐久性や安全性に加え、メンテナンス性も向上させることができます。
制御盤製作において、配線作業は作業者の手腕やセンスが問われる部分である一方、コストダウンの可能性を多く残している部分としても注目されています。
前述の通り、制御盤内の配線は限られたスペースで、電線に負荷をかけすぎることなく行う必要がありますが、配線作業の前工程を工夫することによって、大幅に効率化することができます。
配線の前工程に、盤の筐体に機器を取り付ける作業があります。大手の制御盤製作会社の場合、比較的経験の浅い作業者が担当していますが、次工程の配線作業への関わりが薄く、配線作業効率化の工夫は望めません。
しかし、前行程の作業者に対し配線作業経験者による指導を行うことで改善が可能です。組立工程で一度取り付けたカバーを配線作業でまたはずすようなことが防げたり、配線してからでは切断しにくい部分にあるダクトを組立工程の段階でカットしておいたりといった工夫ができるようになるでしょう。
制御盤の製作においても、自動化の研究は進んでいます。
全自動電線加工機はすでに実用化され、電線カットからマークチューブ挿入、端子圧着までを自動で行い、80%のコストダウンにつながった事例も公表されています。
また制御盤自動配線装置として、ロボットアームによる配線作業全自動化の研究も進んでいます。人の手によってしかなし得なかった制御盤の配線作業がロボットにより全自動化されれば、大幅なコスト削減が望めるとして期待されています。
リタールの姉妹会社であるEPLAN Software & Services 株式会社が提供するEPLAN Smart Wiringは、制御盤内の配線図をデジタルフォーマットで表示できます。一作業ずつのチェックが可能となるため、エラーの大幅な削減につながり、手戻りが少なくなります。
人手による配線作業効率の向上にお悩みの方に適したツールと言えるでしょう。
制御盤の製作において配線作業は重要な位置を占めています。効率化という観点では、従来の手作業による配線においても、前後の工程で工夫することにより効率化を図ることができます。また、全自動化によって配線作業の考え方そのものがイノベーションされるかもしれません。制御盤の配線作業にはまだまだ大きな可能性が秘められているのです。
参考: