電気・電子分野について、国際的な標準化を行う「IEC」について紹介します。IECとはどのような組織なのか、IEC規格とはどのようなものなのか、また日本国内ではどのように標準化が推進されているのかなどをご紹介します。
IEC (International Electrotechnical Commission)とは日本語表記で「国際電気標準会議」。各国の代表的な標準化機関によって組織される非政府間国際機関です。
電気通信分野を除く電気・電子分野について、国際標準化することにより経済と貿易を発展、促進させる目的で活動しており、ISO(国際標準化機構)と協定し国際規格を策定する標準化機関として知られています。協定内容としては、電気通信分野を除く電気・電子分野についてはIEC、それ以外の分野についてはISOが規格を策定することになっています。
IEC発足の背景には、電気・電子分野における標準化について国際協力を促し、世界各国と意思疎通を図りながら、すべての関連事項にまつわる問題を共有していこうという目的がありました。1906年に創設され、現在、IECには正会員60カ国、準会員23カ国が加盟しており、日本からはJIS(日本工業規格)を制定する日本工業標準調査会(JISC)が代表として参加しています。
従来は技術的な規格が主であった製造業においても、流通や情報、または国をまたがる分業制という考え方など、規格のグローバル化が進み、今後さらなる多様化が予想されます。電気・電子の分野においては、標準化の意義と必要性に対する意識の高まりは、比較的早い段階からありました。世界共通の判断および評価の基準、つまりグローバルスタンダードが求められているからです。
また近年では、国家規格などを策定・改訂する際に、国際規格と整合性を持つことが義務付けられています。WTO(世界貿易機関)が制定したTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)にこの規定が明記されており、WTO加盟国の日本でもIEC規格とJISとの整合化が図られています。このことから、新たなJIS規格が策定される際には、IEC規格に準拠した内容がそのまま反映される傾向が強まっています。IECの日本国代表が、JIS策定の審査をするJISCであることからも、IEC規格とJIS規格の整合化が推進されていることがわかります。
経済産業省も標準化に関するパンフレットを公表、海外拠点を持つ大企業のみならず、中小企業に向けても啓発を行っています。
経済産業省製造産業局によって平成28年(2016年)に作成されたこの資料は、産業構造審議会の製造産業分科会において配布されたもので、製造業における標準化についても記述が多く、その必要性を提唱しています。
国主体で国際標準化形成の場に積極的に参加していく必要があること、IECにおける企画の検討体制などの解説があります。またIoT、人工知能の研究開発、自動車産業、ドローン産業、素材産業、宇宙産業などの分野についても標準化の必要性が記載されており、国としても各分野において標準化を後押ししていく方針がうかがえます。
経済産業省、日本商工会議所、日本規格協会(JSA)が協同で作成したこのパンフレットは、主に中小企業向けの資料となっています。
中小企業の保有する新技術や製品を速やかに普及させるというねらいから、標準化をひとつのビジネスツールとして活用していくことを提案しています。中小企業や団体における標準化の戦略的な取り組みとして、主に製造業における事例を紹介、標準化をビジネスツールとして活用した成功例を掲載しています。
このように国際標準化が推進され、国内規格との整合化も進められています。つまり、国際規格の動向に目を向ければ、国内規格が今後どのように策定され、どう変化していくのかを予見することも可能です。
大企業だけでなく中小企業においても、国際規格を見すえた標準化を取り入れていくことが求められます。国際標準化の流れとIEC規格の動向に注目していきましょう。
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参考: