製造業では現在、インダストリー4.0や省人化・自動化など新たなテクノロジーや時流への対応が必要となっています。製造業と密接な関わりを持つ「物流」の世界においても、同様の対応を避けて通ることはできません。インダストリー4.0や省人化が物流業界にもたらす影響に焦点をあて、課題の整理と今後の展望を探ります。
製造業は現在、インダストリー4.0といわれる大きな変革期にありますが、物流の業界にも「ロジスティクス4.0」と呼ばれる変革期が訪れています。物流の変遷と、現在直面している変革期がどのようなものか見ていきましょう。
製造業の世界が第1次、第2次産業革命などを経て、主にIoTとリンクした第4次産業革命を迎えているのと同様に、物流も過去に大きな3つの変革期を経て現在に至ります。
最初の変革は19世紀後半から20世紀前半にかけて、鉄道や貨物自動車による長距離大量輸送という形ではじまりました。古くは御朱印船などに代表されるように、かつて物流の中心を担っていたのは海運でした。しかし製造業の世界的な発展に伴い鉄道網が整備されたり、トラックが生産されたりしたことで、陸路での物流が加速します。船の動力も、それまでは帆船が主であったものがこの時期を境に蒸気船へと切り替わり、安定した運行が可能になりました。この変革は「輸送の機械化」と呼ばれています。
続いての大きな変革期は20世紀、1960年代です。この時期には2つの大きな変化が起こりました。「コンテナ船の普及」と「荷役の自動化」です。従来のパレット式とは異なり、JIS規格のコンテナを使うことにより船荷積み降ろし作業の単純化に成功しました。また、コンテナごとトラックや鉄道に乗せることも可能になり、海と陸の物流がスムーズにつながるようになりました。さらに、自動仕分けや自動倉庫などの普及もはじまり、荷役の自動化が進みます。こうして物流の効率が格段に向上したのが、この時期だといえるでしょう。
3回めの変革は、2010年代以降のインターネットなどの普及に伴う「物流のシステム化」です。例えば、宅配の荷物に追跡番号が割り当てられ、インターネットを介して荷物の配送状況を把握できるのは、まさにこの3つめの変革によるものです。
現在、物流の世界ではロジスティクス4.0の動きがはじまっています。これは製造業におけるインダストリー4.0と同様に、IoTによりインターネットとモノがつながることによって起こる変革になります。例えば、高速道路を無人走行可能なトラックはすでに実証実験段階へと進んでいます。また、倉庫から注文品を取り出し物流へと乗せるピッキングの作業をロボットが行う自動化の仕組みが、通販大手のアマゾン・ドット・コムなどですでに実用化されています。
これまでは高い人件費をかけて人の手により行われていた作業が、AI(人工知能)やIoTの普及により、機械やロボットによる作業へ置き換えられつつあるのが、物流業界の現状なのです。
団塊の世代が定年を迎えたことや少子化により、日本ではいわゆる労働世代となる生産年齢人口が急速に減少する時代を迎えています。そのため製造業や物流業に限らず、ありとあらゆる業界において現場の人材不足は共通の問題となっているのです。この問題を解決する方法のひとつとして、製造業ではIoTを駆使した省人化が進められています。具体的には、従来は工場内で人が行っていた計器のデータ計測と管理を、IoTによりデータが自動的に社内サーバーに蓄積されていくようにする方法などです。その結果、計測作業時間の削減につながり、今後人材の確保が困難になる時代においても、以前と同じ生産体制を保つことができるようになります。
物流においても同じことがいえます。前述の無人走行トラックが普及すれば、トラック運転手を削減することができ、また同様にピッキング業務においても、ロボットの動きを監視する人材を少数配置すれば間に合うようになります。ロジスティクス4.0に伴い自動化を推進していくことが、今後の課題を解決するひとつの方法になるでしょう。
製造業におけるインダストリー4.0により、物流においてもロジスティクス4.0の動きが広がりつつあります。前項で挙げたような無人走行トラックが実用化されれば、貨物の無人配送も可能になるでしょう。またピッキングロボットの発展や、それを監視するためのIoTが広がっていくことで、無人倉庫の実現も可能になります。
今はまだ安全面や法律上の問題など多くの課題を残していますが、フォークリフトの自動化や、IoTによる在庫管理など、さまざまな取り組みが行われています。今後進んでいく人材不足に備えるためにも、ロジスティクス4.0の動きに注目する必要があるでしょう。
参考:
総合カタログ35
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