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プラスチックボックス・キャビネットの用途別選定方法

作成者: admin|Sep 26, 2017 12:28:00 PM

配電機器や制御機器を守る「プラスチックボックス」は樹脂製キャビネットとも呼ばれています。金属製のものに比べ、さびに強く軽いという特長を持つプラスチックボックスですが、直射日光や油などの影響を受けて劣化しやすいという性質も持っています。素材・サイズ・保護等級によって様々な種類がありますが、用途により選定の際に気を付けるポイントが異なります。そのポイントについてご紹介します。

プラスチックボックス(キャビネット)の種類と特徴

ここではプラスチックボックスを形状によって種類分けし、その特徴をご紹介します。

屋根つきと屋根なし

プラスチックボックスには屋根のあるものと無いものがあります。
屋根は主に上部から注ぐ水や埃(ほこり)などからプラスチックボックスを守る役割を担っています。ですから、屋根のあるものは屋外用であることがほとんどになっています。もちろん保護等級などが環境に適合していれば、屋根があるものを屋内で使っても構いません。しかし、やはり屋根のあるものはその分構成パーツなどが増えますし、値段が高くなることもありますので、特別な理由がない限りは屋根のあるものは屋外用と考えていいでしょう。


しかし、屋根があるからといって、必ずしも屋外のどのような環境にも耐えられるわけではありません。例えば、流れの激しい川の側など下側からも水がかかることが予想される場合などは、高い保護等級が必要になってきます。屋外でプラスチックボックスを使用する際は、屋根の有無だけではなく、プラスチックボックスを置く環境と保護等級をしっかりと確認するようにしましょう。


一方で、屋根のないプラスチックボックスには屋内用のものもありますが、屋外で使えるものもたくさんあります。本体と扉の間にパッキンなどが入っていて、屋根がなくても上部からの水や埃の侵入に耐えられる構造になっているものも多いからです。しかし屋外で使用する場合、屋根がないことによりプラスチックボックスの上部に雨滴(うてき)などがたまってしまっていることもありますので、メンテナンスなどで扉を開ける際には、上部に水が残っていないかなどをチェックする必要があるでしょう。また屋内であっても埃などが多い環境もありますので、使用される環境をよく確認し、それに合ったプラスチックボックスを選ぶようにしましょう。

透視ドアつきと透視ドアなし

プラスチックボックスには、扉が透明な樹脂でつくられているものや扉の一部に透明な樹脂ののぞき窓がついているものがあります。このような透視ドアは主に内部に収納した機器の監視のために使われます。例えば電力量計などのように、ある程度の頻度をもって監視したい機器がある場合には、透視ドアがついているものを選ぶことで、監視のたびに扉を開ける必要がなくなり、手間を省くことができます。
頻繁に監視しなければならない機器が収納されていない場合には、基本的に透視ドアのないものを選んでいいでしょう

プラスチックの種類について

ここではプラスチックボックスに使われることの多いプラスチックについて、材質の特徴をご紹介します。

ABS

家電製品などにも使われることの多い樹脂です。成形性が高く、複雑な形状でも作りやすいという特長があります。丈夫で酸やアルカリ・塩にも強く、熱や寒さにも強いので、温泉や海のそばでも使うことが可能です。

一方で、油や揮発性のある液体により劣化・溶解してしまいやすい性質も持っていますので、オイルミストなどが発生する環境下での使用には注意が必要です。

アクリル樹脂

水族館の水槽などにも使われる、透明で強い樹脂です。耐熱性・耐衝撃性に優れていますが、擦り傷などがつきやすいという性質も持っています。透明であることを活かし、主に透視ドアの材質として利用されます。熱や寒さ・直射日光に強いため、屋外向けのプラスチックボックスに利用されています。一方で有機溶剤や酸には弱い材質ですので、周囲の環境に注意が必要になります。

ポリカーボネート

透明で強いのが特長の樹脂です。耐熱性・耐衝撃性があり、ガラスよりも軽くて成形がしやすいことから、ボトルやゴーグルなど様々な用途に使われています。ABSなどに比べて単価が高いため、プラスチックボックス本体として使用されることはありませんが、透視ドアの材質として利用されます。

グラスファイバー強化プラスチック

繊維強化プラスチックの一種で、ガラス繊維と樹脂の複合材料です。樹脂にはポリカーボネートが使われるケースが多いです。軽さと強さを兼ね備え、ゴンドラなどの乗り物の筐体(きょうたい)やプールなど幅広い範囲で使われています。酸には強いのですがアルカリには弱いため、薬品などを取り扱う場所で使用する場合には注意が必要になります。


グラスファイバー強化プラスチックのボックス本体には、透明なポリカーボネート製の蓋やドアを使用すると、視認性も高く、また、グラスファイバー強化プラスチックの強みである軽さを生かすことができるでしょう。

使用場所ごとのチェックポイント

ここでは屋内と屋外に分けて、使用場所ごとのチェックポイントをみていきます。

屋内

水に対するチェックポイントとしては、その段階に応じて次のようなものが挙げられます。

・水気のない場所か

・地下室などで少量の水滴が落ちてくる可能性があるか

・エントランスなどのように開放された場所で上から雨がかかる可能性があるか

・食品工場やメッキ工場など、上下から水がかかる可能性のある場所か

・プールや浴室など、流水がかかる可能性のある場所か

粉塵(ふんじん)に関しては、

・一般的な環境

・地下室や製紙工場など、やや埃っぽい環境

・防塵(ぼうじん)マスクが必要になる環境

の3つの段階でのチェックポイントがあります。

屋外

水に対するチェックポイントとしては、その段階に応じて次のようなものが挙げられます

・軒下など、普通の雨にさらされる場所か

・屋上や降雪地など、横殴りの雨にさらされる場所か

・高い鉄塔の上や洗車場など暴風雨のような雨、水にさらされる場所か

・河川やプールなど、水没する可能性のある場所か

粉塵に関しては

・一般的な環境

・運動場など、やや埃っぽい環境

・採掘現場など、粉塵の多い場所

の3つの段階でのチェックポイントがあります。

 

収納する機器にダメージのないよう、使用用途に合わせてプラスチックボックスの特徴を掴んで最適なものを選びましょう。

 

関連記事:制御盤・分電盤の電気制御機器市場におけるキャビネット(筐体)とその種類

 

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