CPUの高性能化にともない、サーバーから排出される熱量は急速に増加しています。しかし半導体や電子部品は熱に弱く、高温環境下では故障のリスクが高まります。そのため、サーバーラックには、サーバーから出る熱を効率よく逃し、サーバーを冷やす機能が必要になります。
ここではサーバーラックの冷却についてご紹介します。
サーバーラックの発熱問題は、ここ数年で急速に深刻になってきました。その理由として挙げられるのが、ここ近年の急激なCPUの高性能化です。CPUの性能が上がったことにより、CPU一個あたりの処理量が大幅に増え、CPUの温度上昇が大きくなりました。さらにサーバーもブレードサーバーに代表されるように小型化して密集して設置されるようになってきました。そのため、ラック1つあたりの発熱量は、十年前の10倍になったとも言われています。
一方で半導体や電子部品は熱に対して脆弱です。半導体の故障率は、40℃のときを1とすると、60℃では10倍、80℃では100倍にもなります。同様に、電子部品の寿命を左右するといわれるアルミ電解コンデンサの寿命は、「10℃2倍則」という温度が10℃上がると寿命が半分になり、10℃下がると寿命が2倍になるという性質を持っています。これは例えば30℃の環境で使用していた電子部品の寿命は、20℃の環境で使用していた電子部品の半分になるという意味です。
発熱量は増える一方でありながら、熱に弱いサーバー。しかし、万が一サーバーが故障してしまうとサーバーダウンなどに繋がり、多大な社会的損失になってしまう可能性も少なくありません。そのため、状況に応じてサーバーラックの冷却することはとても大事です。
サーバーの故障やサーバーダウンを防ぐために大切なサーバーラックの冷却。実際にどのような方法があるのでしょうか。
空調などによりサーバールームそのものを冷却する方法です。サーバーの発熱量がそれほど多くない場合や、サーバーの密集度が低い場合などに有効な方法です。高密度のラック群に対応するためには、空調機を増やす、風量を増すなどの対策を取るようになりますが、後から増強することは簡単ではなく、古い設計の建物では対応できない場合もあります。
フロア空調による冷却を補助する方法として、通常のサーバーラックより空気が流れやすい高開口ラックを使用し、サーバーやその他の搭載機器自身が持っているファンを利用する方法があります。
近年ではCold aisle / Hot aisle 方式を使用してサーバールーム内を効率的に冷却する方法を取るケースが増えてきました。Aisleとは例えば新幹線や飛行機などで通路側を意味する言葉です。サーバーラックを同じ向きにすき間なく横ならびに並べ、吸気が行われるサーバーの前面側の通路をCold aisle、排気が行われるサーバーの後面側の通路をHot aisleと呼び、Cold aisle と Hot aisleの間をカーテンなどで仕切るのが一般的な方法です。
サーバーがあるフロアの空調だけでは冷却が足りない、高温になってしまう部分がある場合などは、サーバーラックに冷却装置を設置し、サーバーを冷却する方法があります。
ファン、つまり換気扇でサーバーラックの中の空気を強制的に流すことで、サーバーを冷却する方法です。サーバーラックのサイドに取り付け、横から風を流すものと、サーバーラックの下の方にサーバーと同じ向きで取り付けて、サーバーラック内の空気を下から上に循環させるものがあります。比較的安価な方法ですが、サーバーの配置や配線の状況によっては、風が通りにくい場所は温度が下がりにくくなってしまいます。
サーバーラックに個別に取り付けるクーラーです。ルーフ型クーリングユニットと呼ばれ、サーバーラックの上部に取り付けます。
冷たい空気をサーバーラックの上方から流し込みますので、フロア空調のみの冷却やファンプレートによる冷却にくらべて温度の上昇を抑えることができます。
水冷ヒートエクスチェンジャーとは熱交換器のことです。サーバーラックから排出される温かい空気を取り込み、流水が通るパイプに触れさせることで温度を下げた空気を再びサーバーラックの中に戻します。冷却性能は高いですが、水を流すための設備が必要になるため大掛かりになります。サーバーの発熱量が大きく冷却が足りない場合に有効です。
エアダクト、つまり空気が通る管を使って、冷たい空気を目的の場所に直接送り込むことでサーバーを冷却する方法です。例えばサーバーラック内の特定のスポットのみに熱が集中する場合などに有効です。ファンプレート、クーリングユニット、水冷ヒートエクスチェンジャーなどと併用することで、より高い効果を得ることができるでしょう。また特に温度が上がりやすい場所を集中的に冷やすことができるので、熱がほかの部分に広がっていくのを防ぐことができ、省エネにもつながります。
サーバーが高温になると故障などのリスクが跳ね上がり、サーバーダウンなど大きな社会的リスクに繋がる可能性があります。状況に応じて適切な冷却を行うことで、リスクに備えましょう。
また、省エネについても考慮することで、コストダウンにもつながりますので、高温対策を考えるときは、ぜひ省エネについても一緒に考えてみてください。
参考: