制御盤として利用されるキャビネットについてご紹介します。
制御盤とは、機械や生産ラインにおいて、入力された情報を処理し、機械を制御・操作するための電気機器を納めた箱のことです。用途に応じて、状態を知らせるランプやメーター、操作に必要なスイッチ、タッチパネルなどを備えていることが特徴です。このように書くと難しく感じるかもしれませんが、分かりやすい例としては、エレベーターの階数選択ボタンや、立体駐車場の操作ボックス、体育館のような大型施設の照明スイッチなども挙げられる、とても身近なものなのです。
ここでは制御盤としてキャビネットが利用されている事例などを交え、制御盤ならではの仕様などについて述べていきます。
制御盤は、工場や施設、オフィスなど、電気機器のある場所で幅広く利用されています。そしてその制御盤の外装にはキャビネットが使用されています。制御盤はいったいどのような場所で利用されているのでしょうか? 身近で分かりやすい事例とともにご紹介します。
工場などでは、とても多くの制御盤が使われています。
例えば、自動車の製造ラインでは、金型のプレスから溶接、塗装、組立といった一連の工程を経て、最後に検査が行われます。プレス工程ではプレス機の圧力制御、塗装工程では何層も重ね塗りを実施する際の塗装ノズルの向きや位置、塗装色選択、組立工程では様々な大きさや形状の部材を組み付けるためのアーム制御等、多くのサーボモーターや油圧機器等を制御する必要があり、そのための電気機器は全て制御盤に納められます。正常に製造工程が進むよう制御することはもちろん、異常が発生した際の警報の発報や安全性確保も重要です。
このように、生産などがスムーズに安全に行えるように制御するのも制御盤の役割の一つです。
私達の生活を守る防災無線にも制御盤が使われています。
電気の供給が行われている通常状態では、防災無線は非常用電源に充電をしつつ、防災無線は供給電力を使用して動作します。しかし停電などにより電力の供給がストップした際には、動作のための電力を非常用電源へと自動的に切り替えるよう、制御盤によってコントロールされています。いざという時にも問題なく動作できるように制御するのも、制御盤の大切な役割です。
制御盤として利用されるキャビネットには、汎用キャビネットと比べどのような性能が要求されるのでしょうか。
ここでは制御盤用キャビネットの特徴についてご紹介します。
制御盤は、その用途に応じて国際安全規格の「安全カテゴリー」に分類されることがあります。安全カテゴリーとは安全に関わる制御システムに対し安全を守るために課せられる要件のことです。
例えば一般的な機械であれば、故障すると動かなくなるので、機械の品質を上げるという考え方で設計されます。しかし制御盤のような安全を守るためのシステムの場合、「故障しても安全機能を維持させる」という考え方が必要になります。これがどういうことか、工場の生産ラインを監視する制御盤で、中にあるスイッチの一つが故障した場合を例に考えてみましょう。一般的な機械の基準であれば、内部のスイッチが作動しなくなれば故障と判断され、機械にそれ以上の役割を求められることはありません。しかし制御盤の場合、スイッチが故障して作動しなくなると、ラインで異常が発生しても自動的に止まらなくなるといった事態が起こる可能性があります。そのため、スイッチの故障を感知した場合にはラインを止めるという制御が必要になります。これが「故障しても安全を維持させる」という考え方です。
安全カテゴリーに属する制御盤は、故障を防ぐ品質だけでなく、定期点検ができる設計や、故障しても安全を維持する設計が必要になります。ですから、制御盤に使われるキャビネットには、定期点検がしやすい形や難燃性、などが要求されることになります。
上記のように制御盤にはより高い安全性が求められます。
ですから、収納された制御用電気機器を守るために、利用する環境に応じて、高い強度や、耐食(防錆)、防塵防滴(防水)性能、ノイズ対策(EMC)性能、温度管理などが要求されることになります。
特に制御盤用キャビネットの基本的な要求仕様となる保護構造については、JIS規格の元ともなっているIEC規格のIPコードが有名です。二つの特性数字が、それぞれ防塵性能と防滴(防水)性能を表します。場合によってはその後に付加文字が付き、保護構造を規定します。またアメリカでは、独自にNEMAによって規定された規格を適用しています。IP保護等級とNEMAの保護等級には、直接の互換性はありませんので注意が必要です。
ここでご紹介してきたように、制御盤として利用されるキャビネットには、より高い安全性能が要求される場合があります。また、輸出案件の場合、仕向け先の国・地域によって必要とされる安全要求が異なります。
キャビネットを利用する環境や周囲の状況などをしっかりと把握し、安全性を満たすキャビネットを選ぶようにしましょう。
参考