キャビネットの材質は大きく分けて金属と樹脂の2種類があります。金属のものにはスチールやステンレス、アルミなど。樹脂のものにはABSやPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)など、さまざまな種類の材質があります。ここではキャビネットに使用される主な材質の性質と、それぞれの用途や特徴などをご紹介します。
キャビネットの使用用途によって、適した材質も異なりますので、用途に合わせてキャビネットの材質を選ぶことが必要です。
金属製キャビネットの特長は、樹脂製のものに比べて強度があることです。そのため、大型のものや自立型のものに適しています。また、高温や低温、オイルミストなどへの耐性が高いことも特長として挙げることができます。
金属製キャビネットの材質としては、スチール(鋼)、ステンレス、アルミが主に使用されています。それぞれの材質の性質や特長は次の通りになります。
主に使用されるのは圧延鋼板です。圧延鋼板は、加工しやすく強度があるのが特長で、自立型のキャビネットや盤用キャビネットなどに多く使われています。スチール製のキャビネットは屋内、屋外ともに広く使用されています。
塩や水により腐食しやすいため、腐食のおそれのある場所で使用する場合には、塗装性能を上げるなどの対応が必要になります。
ステンレスの特長は一般的なスチールに比べて耐食性が高く、鋼板にした際の強度も高いことです。傷や汚れもつきにくく、衛生環境に配慮が必要なハイジェニック用などにも使用されています。屋外用にも使用されることもあります。
しかし、融雪剤や海水など塩と長期間接触するような環境下や、鉄粉が舞うような環境では、イオンの働きによりステンレスの特長である耐食性が失われてしまいますので、注意が必要になります.
他の金属性キャビネットに比べ軽いことが特長です。そのため、ポール上など、強固な固定ができない場所にも設置することができます。非常に耐食性も高いので、屋内屋外を問わず広い範囲で使用することができます。また、熱伝導性が高いため、内部の熱を外に逃がすことが可能です。
樹脂製キャビネットの特長は、軽さと耐食性の高さです。そのためポールの上など、丈夫な固定ボルトが打てない場所に取り付ける場合や、直射日光の当たらない軒下のような屋外での設置などに適しています。また金属製のものに比べて安価ですので、工事現場等での仮設用のキャビネットとしても使用されています。
一方、金属製のものに比べて強度が低いことや、油や直射日光により樹脂が劣化、高温や低温環境での変形や破損がありますので、使用する場所の環境に注意を払う必要があります。
丈夫で成型しやすいのが特長で、家電製品などにも使われることの多い樹脂です。酸やアルカリ、塩などに強いため、温泉や海などのそばでも使用することができます。
樹脂としては熱や寒さにも強いほうではありますが、やはり金属に比べると温度の変化に弱くなります。また油や揮発性のある液体により劣化したり溶解したりしてしまうため、注意が必要です。
繊維強化プラスチックと呼ばれるものです。ガラス繊維や炭素繊維と樹脂の複合材料で、軽さと強さを両立する素材です。金属などに比べると比較的安価であるため、工事現場などでの仮設のキャビネットとして使用するのに適しています。
キャビネットにはガラス繊維をSMC(ポリエステル樹脂)に混ぜたものが多く使われます。
酸には強いのですがアルカリには弱いため、薬品などを取り扱う場所で使用する場合には注意が必要になります。
強度が高く、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂です。透明な樹脂の中では、非常に透明度が高く、ガラスよりも軽くて成形がしやすいことから、ボトルやゴーグルなどさまざまな用途に使われています。キャビネット本体として使用される他、内部の計器などを確認するための覗き窓や、リモコン受光部などとして使用されます。
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使用場所 |
特長 |
耐性がある環境 |
注意が必要な環境 |
特徴的な用途 |
金属 |
スチール |
屋内/屋外 |
強度がある |
高低温、オイルミスト |
塩、水、腐食性ガス |
EMC |
ステンレス |
屋内/屋外 |
丈夫、衛生的 |
高低温、腐食 |
塩 |
ハイジェニック |
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アルミ |
屋内/屋外 |
軽量、熱伝導性高 |
腐食 |
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ポール上 |
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樹脂 |
ABS |
屋内/屋外 |
軽い |
塩、酸、アルカリ |
高低温、オイルミスト |
海沿い、温泉近く |
FRP |
屋外 |
強度がある、軽い |
塩、酸 |
高低温、オイルミスト |
仮設用 |
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ポリカーボネート |
- |
透明、強度がある |
衝撃 |
アルカリ、溶剤 |
窓 |
例えば海岸沿いで塩の影響のある場所で、スチール製のキャビネットを使用したり、オイルミストのある場所で樹脂製のキャビネットを使用したりしてしまうと、腐食や破損の原因となり、電気の安全な運用に支障をきたす恐れがあります。各材質の特長を理解したうえで、導入の検討をしましょう。
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参考: