制御盤の安全性向上や、北米地域への製品輸出の際に重要となるのが「UL508A」です。UL508Aに準拠した制御盤を製作する際には、UL認証品による部品選定や「NFPA70」「NFPA79」といった関連規格の参照など、あらゆる点に注意しながら進める必要があります。本記事では、UL508Aの概要をはじめ、関連規格や制御盤製作時のポイントについて詳しく解説します。
ここではまず、UL規格の概要に触れつつ、UL508Aについて解説します。
前述のとおり、UL508Aは「NFPA70」や「NFPA79」といった関連規格の参照規格であり、制御盤がUL508Aに準拠することで、通常はNFPA70とNFPA79の要件にもあわせて適合されるという関連性を持っています。
NFPA70は、米国電気工事基準(NEC)としても広く知られるアメリカの電気工事規格で、米国防火協会(NFPA)によって策定されています。
アメリカ国内へ輸出する機械、装置、電気設備などの設計や設置、保守に関する規格で、工場や公共施設、変電所、倉庫といった特定のエリアへの設置の際に準拠することが必須となる規格です。
主な対象物としては上記設備に使用される機器やケーブル類で、火災や感電など、電気に関するあらゆる危険から設備の安全性を保証しています。州や地域によっては適用される規格の年度版が異なるため、状況に応じて適切な対応が必要です。
NFPA79とは、NFPA70と同様に米国防火協会(NFPA)によって策定された米国の産業機械用の電気安全規格で、ケーブルや電線の仕様について定められています。
NFPA79は、産業機械や機器における火災・感電の防止を大きな目的としており、1000V以下で動作する一般的な電気・電子部品、システムなどが対象となる規格です。
また、NFPA79はNFPA70の第670条に記載されるなど、相互参照される関係であり、NFPA70とあわせて米国で広く普及しています。
さらに、NFPA79は「IEC60204-1」との互換を推進しており、ヨーロッパ市場をはじめとする世界各国への対応が進められています。製品のグローバル化が急速に進むなかで、国際基準による安全性が求められていることが背景です。
ケーブル類をはじめとする、火災や感電など電気に関する危険防止の取り組みは、今後もさらに重要な要素になっていきます。NFPA70やNFPA79では、北米地域へ製品を輸出する際の企業の信頼性やブランドイメージ向上はもちろん、損害賠償や保険請求の回避など、あらゆる問題に対する詳細なガイドラインを策定しています。
規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識
ここでは、UL508Aに対応した制御盤を製作する際のポイントを、設計や部品選定など、いくつかの項目に分けて解説します。
制御盤を設計する際には、初期段階にできるだけ綿密な設計をしておく必要があります。
UL508Aをはじめ、NFPA70やNFPA79など、制御盤には設計時に留意するべき制約が非常に多く、ユーザーが後付けで安全対策を行うことは困難です。したがって、メーカーが設計時にあらゆる問題を想定し、対策をしておくことが重要といえます。
UL508Aに適合する制御盤を北米向けに製作する際、使用する部品に対しては「UL認証品」を要求されるものがあります。UL認証品には「リステッド認証品」と「レコグナイズド認証品」の2種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。
・リステッド認証品
リステッド認証品は、ULに対する申請が不要であり、新規部品や変更部品としての採用が即時可能です。トラブルや調整時にも現場で臨機応変な対応ができるほか、制御盤と外部装置を直接接続する際の配線としても使用できるなど、多くのメリットを持っています。
・レコグナイズド認証品
レコグナイズド認証品は、ULに対する申請が必要であり、必要書類やデータの準備・登録を行ったうえで使用しなくてはなりません。
ULによるチェックや認証処理、変更手続きなどを完了する必要があるため、使用するまでにタイムラグが発生します。また、制御盤と外部装置を直接接続する際の配線には使用できないこともデメリットといえるでしょう。
一般的にはユーザーが直接操作に携わる工作機械やロボットなどの最終製品に使用する部品がリステッド認証品の対象となり、リステッド認証を取得する必要がない部品がレコグナイズド認証品の対象となります。
製造において重要なのは、UL508Aに準拠したケーブルの配線を行うことです。適切なサイズのワイヤやケーブルを使用することはもちろん、結線についても安全かつ信頼性の高い方法で行う必要があります。
製造完了後、配線や部品の取り付け、接地および絶縁、保護装置の設置などが適切かどうか、内部検査を行います。制御盤の動作確認にあたる機能試験、電気的特性を評価するための電気的試験、ブレーカーや遮断機といった保護装置が適切に動作するかどうかのテストなど、あらゆる状況を想定した試験が必要です。
また、上記試験結果に加え、配線図や回路図、部品リストなど、製作した制御盤に関する必要書類を作成し、製作された制御盤がUL 508Aの要件に適合しているかどうかの評価を行います。
本記事では、UL508Aの概要をはじめ、関連規格や制御盤製作時のポイントについて解説しました。
制御盤の安全性評価など、北米地域への製品輸出において重要な役割を果たしているのがUL508A規格です。UL508Aに準拠した制御盤を製作する際には、UL認定品による部品選定や「NFPA70」、「NFPA79」といった関連規格の確認など、さまざまな点に注意する必要があります。
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