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ゼロエミッションとは―実現に向けた東京都の取り組みと企業の事例

作成者: admin|Nov 15, 2021 10:40:14 AM

世界の目標として掲げられているゼロエミッションとはどういったものでしょうか。ゼロエミッションの意味と、東京都が策定したゼロエミッション東京戦略、企業が進めているゼロエミッションへの取組事例などをご紹介します。

ゼロエミッションとは

そもそもゼロエミッションとは、どういった意味を持つ言葉として使われているのでしょうか。その成り立ちと、広がりを見せる活動の内容を見てみましょう。

ゼロエミッションの意味

ゼロエミッションとは、廃棄物を出すことがなく資源を循環して活用していく社会システムを表す言葉です。エミッションは「排出」を意味し、ただ排出するだけのものをゼロにするという意味を持ちます。

ゼロエミッションという言葉は、1994年に国連大学で提唱され、世界的な取り組みとして広まっていきました。実際には排出をゼロにすることは不可能であるため、実質的に資源の活用を最大限にし、徹底的なリサイクルを目指す仕組みを目標とします。

ゼロエミッションを実現するためにはいろいろな手法があります。ひとつの企業内で取り組むだけでなく、複数の企業間で連携し資源の活用法を見いだすアプローチを実践しているケースもあります。また、企業と企業の連携だけでなく、都市全体での資源循環を通じて産業振興と地域活性化を進める取り組みも提言されています。こういった地域や都市全体での取り組みは、エコタウン構想と名付けられ実現に向けて進められています。

新たに追加されたもうひとつのゼロエミッション

本来、資源全体の循環社会を目指す意味で提唱されたゼロエミッションという言葉ですが、近年特に注目されるもう一つの意味も併せ持つようになっています。

それは、CO2排出量に関する意味合いでのゼロエミッションです。地球温暖化ガスであるCO2排出量の問題も、世界で取り組む重要な課題であり、各国で目標を定め削減を進めています。

ゼロエミッションは、資源の問題だけでなくCO2排出量に関する意味も含め、世界で取り組む目標として掲げられるようになっています。

ゼロエミッション東京戦略

循環型の社会システムとCO2排出量削減の意味を併せ持つようになったゼロエミッションは、先進国である日本も率先して取り組まなければならない課題です。

こういった状況を受け、東京都は世界の大都市の責務としての目標を掲げています。平均気温の上昇を1.5℃に抑えることを追求し、2050年までにCO2排出量をゼロに貢献することを目標として定めました。これは、世界の都市によるプラットフォームU20において宣言されたもので、その具体的な施策は「ゼロエミッション東京戦略」と名付けられています。

その中では、ゼロエミッションの実現のために次の6つのセクターに分け、取り組みを進めていく方策が盛り込まれています。

エネルギーセクター

再生可能エネルギーを基幹エネルギーとし、2050年までに達成する目標として掲げているのが、使用エネルギーの脱炭素化100%です。2030年のマイルストーンとして、再エネ電力利用割合30%に、都有敷設の使用電力について100%再エネ化などを設定しています。

これを達成するためのアクションとして、太陽光パネルや蓄電池などの導入補助による自家消費、各家庭で再エネ電気をグループ購入するビジネスモデルの構築などが盛り込まれています。

また、水素エネルギーの普及拡大のため、再エネ水素活用設備の導入支援、家庭や業務、産業用燃料電池の普及支援などを計画しています。

都市インフラセクター(建築物編)

建築物に関する都市インフラについて、ゼロエミッションビルの拡大を計画し、2050年までに都内すべての建物をゼロエミッションビルとすることをゴールに設定しています。

中間目標として定めているのは、2000年から2030年の間に、温室効果ガスの排出量を30%削減、エネルギー消費量38%削減などです。こういった目標達成のため、「東京ゼロエミ住宅」の普及に向けた導入支援、省エネ家電への買い替え促進などを推進する方針です。

都市インフラセクター(運輸編)

運輸に関する都市インフラについては、ゼロエミッションビークル(ZEV)の普及促進を計画しています。2050年までに都内を走る自動車をすべてZEVにすることをゴールとし、2030年には乗用車新車販売割合のうちZEV50%にすることをマイルストーンとしています。このほか、ゼロエミッションバスを300台以上、ZEVのための急速充電器や水素ステーションの整備なども、2030年までの目標としています。

これらを達成するため、個人や企業へのZEV購入支援、バスや大型車をZEVにする際の導入支援、ZEVのためのインブラ整備支援などを推し進める計画です。

資源・産業セクター

資源と産業に関するセクターでは、4つの計画を掲げています。
持続可能な資源利用のため3Rを推進すること、CO2実質ゼロのプラスチック利用の実現、食品ロス発生量を実質ゼロにすること、フロンの排出量をゼロにすることの4つです。

これらの実現のためには、環境配慮設計の促進やリサイクルルートの構築、同一のものを原料としてリサイクルし、再び同じものを作る水平リサイクルのようなイノベーションが必要だとしています。また、食品サプライチェーンの連携や、AIICTを活用した取り組みによって食品ロスを削減する取り組みを進める方針です。

気候変動適応セクター

ゼロエミッション東京の中には、気候変動適応方針も盛り込まれています。近年の猛暑や豪雨といった、気候変動の影響による被害を回避または軽減するための適応策にも取り組み、リスクを最小限にすることを目標としています。

災害リスクの発信、暑さ軽減のための都市緑化計画、地域気候変動適応センターの設置などを方策としてあげています。

共感と協働(エンゲージメント&インクルージョン)

最後のセクターは、都市のあり方や社会の変化などに関する計画をまとめたものです。

多様な主体と連携し、ムーブメントを起こしながら社会システムの変革を促すこと、区市町村との連携強化と世界諸都市との連携強化、都庁の率先行動の内容などを盛り込んでいます。

ゼロエミッションへの民間の取り組み

こういったゼロエミッションへの取り組みは、国や自治体だけでなく企業も協力してすすめなければ達成できません。いくつかの企業は、すでにゼロエミッションを意識した取り組みを進めています。

企業が進めているゼロエミッションへの取り組み事例をご紹介します。

衣類メーカーの修理推進プログラム

アウトドアウェアを中心に展開する衣類メーカーでは、製品を長く使ってもらうために情報を共有し、イベントやツアーの情報を公開するためのプラットフォームを立ち上げました。その中では、自社の衣類製品をユーザーが自分で修理する方法が具体的に公開されています。

同社では、衣類を修理して使用し寿命を9カ月伸ばすことで、炭素排出量や水の使用量、廃棄物が環境に与えた負荷を20%30%削減できると試算しています。ものを長持ちさせることが、地球のために個人ができる最善の行動だと訴え、衣類メーカーとしての責任からその手伝いをするという考えを示しています。

ビールメーカーの廃棄物理作生率100%への取り組み

日本のビールメーカーでは、2002年の時点で全工場における廃棄物のリサイクル率100%を達成しています。

ビールの製造工程で最も多く排出される麦芽の殻皮は、牛の飼料として再利用され、その他の有機物も堆肥として再利用されています。

機械器具メーカーでの分別再利用の継続的な取り組み

重機から精密機器までの製造を行う機械器具メーカーでは、1999年に環境方針を定め、2004年からはゼロエミッション活動を始めています。その結果、2011年にリサイクル率100%を達成しその後も継続しています。

ゼロエミッション推進委員会を立ち上げ、他社の分別ルールや活動方法を視察することから活動を開始しています。部門ごとに排出される廃棄物をリストアップし、廃棄物回収箱の設置、分別方法の細分化などに取り組み、リサイクル可能な処理会社の調査も進めました。定期的な分別パトロールを実施し、リサイクル率100%の継続に成功しています。

コンビニエンスストアでは食品廃棄物からエネルギーを

全国的に展開するコンビニエンスストアチェーン店では、食品廃棄物を資料や肥料としてリサイクルする取り組みを続けてきました。

さらに、こういった取り組みに加え、新たな方法にもチャレンジしています。フライドフーズを調理したあとに排出される廃油を、バイオディーゼル燃料にリサイクルし、発電機の燃料として利用する取り組みです。

このコンビニエンスストアチェーン店では、このバイオディーゼル燃料のほか太陽光発電システムやフロンを使わない冷凍冷蔵庫など、いくつもの省エネ施策について実験と導入を進めています。それにより、外部から調達する電力量の7割を削減する見込みとしています。

ゼロエミッション達成に向けて進む官民連携での取り組み

ゼロエミッションの意味と内容、それを実現するために生まれたゼロエミッション東京戦略、各企業の取組事例などをご紹介しました。

ゼロエミッションは国や自治体が推進するのはもちろんのこと、企業も協力して進めなければ実現しません。また、それだけでなく、官民の連携、企業間の連携も必要になります。これからの社会のあり方を変えながら持続可能な成長をしていくために、ゼロエミッションは実現しなければならない世界の目標の一つです。

参考:

地球環境に配慮したBlue e+シリーズ、省エネ・省メンテナンスを実現したBlue eシリーズ、ノンフロンタイプのBlue e NFシリーズをラインアップ。リタールの盤用クーラーシリーズをまとめたカタログはこちら。