電気製品にULのマークを見たことはありませんでしょうか。これは、「UL規格」と呼ばれる安全規格の認定を受けていることを表しています。世界で最も影響力のある安全規格のひとつ、UL規格についてご紹介します。
日本の標準規格「JIS規格」と言えば、産業に関わる誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。では、アメリカの規格、UL規格についてはどうでしょう。日本とアメリカで標準とされている規格には大きな違いがあります。その違いも含め、UL規格の特質について見てみましょう。
UL規格は、アメリカの認証機関「Underwriters Laboratories Inc.」(アメリカ保険業者安全試験所)が策定する規格です。この頭文字をとってULと省略されています。
日本の標準化・規格機関と言えばJISについて審議するJISC(日本産業標準調査会)ですが、これは経済産業省に設置されています。一方で、Underwriters Laboratories Inc.は非営利目的で組織されている民間の企業です。
日本のJISCと異なり、民間ではあるものの公共安全を目的としている点においてULは公共性の高い事業を行っている機関です。特にアメリカ国内では、UL規格の認定品は高く評価され、公的機関の調達条件となっている場合も少なくありません。連邦・州・市の政府や保険業者、それらに納品する建築業者や製造業者では、ほとんどの場合UL規格適合品が要求されると考えて間違いありません。
日本国内で製造した製品でも、UL規格適合を前提として設計製造したものがあります。このとき、ULにサンプルを送り試験を受けて合格したものはUL認定品となります。これに対し、設計上はUL規格の基準を満たすようできているものの、実際の認定は受けていないものはUL準拠品と表現されます。
UL規格が要求条件とされている場合、UL認定品でなければいけないのか、UL準拠品でよいとされているのか確認しておく必要があります。
ULという企業が使命として掲げているのは、次のようなことです。
(引用:Our Mission Working for a safer world|UL:Google Chromeによる自動翻訳)
ULではこういった企業としてのミッション実行を根底に、材料や部品、装置、製品に関して機能や安全性についての標準化を行っています。そのために製品の機能や安全についてどのように保証するかの基準を定め、試験方法を検討し、実際に試験と評価を行っているのです。
UL規格には2つの認証マークが存在します。
UL規格は、アメリカ国内での販売・流通時にのみ関係してくる規格というわけではありません。日本国内でもULの策定した試験方法が用いられている分野があります。
それが、電線・ケーブルの火災安全性を評価するために行われる難燃性試験です。さまざまな種類の燃焼実験が行われる中で、以下の試験においてはUL規格に策定された試験方法が用いられています。
日本国内の電線・ケーブルに関する難燃性試験では、UL規格の試験方法のほかJISやIEC、IEEEによって規定された試験方法を組み合わせて実施されています。
こういった試験によりUL規格に適合した電線・ケーブルには、使用条件に適したスタイルナンバーというものが振られます。
このスタイルナンバーは、電線やケーブルの用途・形状・定格電圧と使用温度によって決まります。大きく分類すると、スタイルナンバー1000番台は単芯の電線・ケーブルに振られます。2000番台は2芯以上の電線・ケーブルに、3000番台は特殊絶縁材料を使った電線・ケーブルになります。
例えば、スタイルナンバー1429は、機器内配線用の架橋ビニル絶縁電線に関するスタイルナンバーであり、定格150V、80℃のものを表します。2637は定格30V、90℃で使用できるコンピュータまたは電子機器内外接続用の2芯以上のビニルジャケットケーブルです。1108は定格300V、80℃で使用できる電子機器内用の耐熱ビニル絶縁電線というように、さまざまな電線・ケーブルに関してスタイルナンバーが定められています。
UL規格とはどのようなものか、適合が要求される条件や国内での適用分野についてご紹介しました。
UL規格はアメリカにおいて製品輸出の条件になっていることもあり、アメリカ向けの取引には必須と考えても間違いではありません。公共機関で使用する製品について、UL認定品の使用を義務付けている州が多いのも事実です。アメリカ国内だけでなく世界的な基準としても評価されるUL規格は、その製品が「安全であることの証」にもなります。
(※2020年に掲載した内容を再掲載しております)
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参考: