温度を管理するために使われる温度センサーとサーモスタット。制御盤に使われる温度センサーにはどのような種類があるのでしょうか。また、サーモスタットはどういった役割と機能を持っているのでしょうか。
温度を制御する装置として代表的なものに、サーモスタットがあります。
サーモスタットは適切な温度を維持するために、加熱装置または冷却装置のオンオフを切り替えるスイッチの役割を果たします。このとき、温度を検知するためにさまざまな種類の温度センサーが用いられます。そのなかで基本的な種類のひとつが、バイメタルの原理を用いた機械式の検知方法です。
制御盤で使われる温度管理装置における3つのキーワード、「温度センサー」「サーモスタット」「バイメタル」についてさらに詳しく見てみましょう。
温度センサーは、フィードバック制御においてセンサー部に位置します。温度センサーは、その名のとおり温度を測定し「現在の温度が何度か」を制御部に伝えるための装置です。
制御盤に用いられる温度センサーには次のような種類があります。
金属の抵抗値は温度にほぼ比例するという関係性があり、この現象を利用したのが測温抵抗体です。プラチナ(白金)を測温素子として使う白金測温抵抗体が主流です。温度測定の精度が良く、特に精密温度測定が必要な場合に用いられます。
ゼーベック効果と呼ばれる、金属導体の一端を加熱することで熱起電力が生じる現象を利用した温度センサーです。測温抵抗体より安価で構造が単純なことから高い信頼性があります。また測定できる温度の幅が広いのも特徴のひとつです。現在では工業用として最も広く使われている温度センサーです。
地球上のすべての物質は赤外線を発しています。このとき、温度が高ければ短い波長の赤外線を強く、温度が低ければ長い波長の赤外線を弱く放射する特性があります。この赤外線の強さを測定することで、温度を算出するのが放射温度計です。物体に触れずに温度測定が可能なことから、超高温のものの測定に向いています。
バイメタルの原理を用いた温度計です。感温管の中には弦巻き(つるまき)状にしたバイメタルがあり、これが支持針を直接回転させる構造になっています。構造が単純で故障が少なく、工業用に多く使われてきた温度センサーです。
このほか、代表的な温度測定器としてアルコール温度計や圧力温度計があります。しかし、制御盤にはほとんど用いられることはありません。
サーモスタットは、フィードバック制御において制御部の位置にあります。温度センサーによって測定された温度をもとに、加熱装置または冷却装置の制御を行う装置です。
「どのような目的を持って用いるか」という観点からのふたつの機能的な分類、「どのようなことができるのか」という観点からの3つの役割を見てみましょう。
サーモスタットは用途から大きく2種類に大別できます。
これらの機能を総合して、サーモスタットの役割は次の3つと考えることができます。
このような役割を持つサーモスタットのうち、バイメタルを感熱体として用いているものは、バイメタル式サーモスタットと呼ばれています。
バイメタルとは、熱膨張係数の異なる2種類の金属板を貼り合わせた複合金属材料で、温度が変化するとその膨張率の違いから湾曲する性質を持ちます。また、バイメタルは金属または合金によってできているため、導電性も持ち合わせます。
この特性を用いて、バイメタル自体を接点として使い、接点を開閉し加熱器のオンオフを繰り返すことにより、温度を調節するための装置がバイメタル式サーモスタットです。単純な構造ながら精度は高く、また繰り返し使用できるため、身の回りから製造業の現場まで非常に幅広く使われています。
温度制御に関して必ずおさえておきたい3つのキーワード、「温度センサー」「サーモスタット」「バイメタル」の原理について紹介しました。
温度センサーとサーモスタット、そしてバイメタルはあらゆる場所で使われています。これらは機器や設備だけでなく工場全体のIoT化の一翼を担い、現代の製造業を支えているともいえる存在となっているのです。
参考:
リタールの技術ライブラリ
「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。