漏電に対する日本と海外における考え方の違い-日本国内の規格だけで十分なのか?

近年のグローバル化に伴い、国内だけでなく海外向け製品の電気設計に従事する機会も増えてきました。電気設計では人体保護の観点から、漏電や短絡・地絡対策が必要であり、海外向け製品では地域によって満たすべき要求に違いがあります。例えば、漏電に関しては、日本ではまず漏電しないように設計を行いますが、海外では漏電そのものを防ぐよりもアースによる地絡を徹底し、人への感電をなくすような設計が主流です。これを踏まえて、短絡・地絡における日本と海外の違いをご紹介します。

短絡と地絡。そもそも何が違うのか

短絡と地絡と言葉は似ていますが、事象としては全く異なります。ふたつの言葉の意味にどのような違いがあるかまとめます。

短絡とは?

電線と電線が接触することで電線間のインピーダンス(交流回路での電圧と電流の比)が大きく低下し、電線に対し大きな電流が生じる現象を指します。電線を守る被覆(ひふく)の経年劣化、外部からの衝撃、機器の操作ミスによるアークなどで、電線同士が接触することにより短絡は起こります。短絡は電線の溶断、発電機や変圧器の焼損、火災事故などにつながるため、迅速な対処が必要です。

地絡とは?

短絡が電線同士の接触で起こるのに対し、地絡は電線と地面が電気的につながることで大地に電気が流れる現象を指します。例えば、何らかの理由で絶縁が不十分となっている場所に人が手を触れると、人体を経由して地面に電気が流れ、感電します。電線に樹木や重機など大地に接している物体が接触する場合、樹木や重機を経由して地面に電機が流れます。電線を守る被覆の経年劣化により電線導体部が露出し、そこと大地が何らかの導体を介して接触することで起こります。

電気設計における短絡・地絡対策とは?

電気設計における短絡・地絡対策としてはヒューズとブレーカーが使用されます。ヒューズとブレーカーは基本的な機能は同じですが、構造に違いがあります。

ヒューズ

設定された数値以上の電流が生じるとヒューズ自体が切れ、電流を通さないようにする構造をしています。ヒューズを搭載すれば、短絡や地絡で異常な電流が生じてもヒューズが切れることで確実に電路が途切れるため、電装品の破損を防ぐことができます。ヒューズが切れた機器は、ヒューズの交換により復旧が可能です。ただし、交換用のヒューズを常備しておく必要があります。また切れたヒューズを探す手間が発生し、復旧に時間がかかる場合があります。

ブレーカー

ヒューズ同様、想定以上の電流が生じた際に電流を通さないようにする機器です。ヒューズと異なる点は、電線が切れることなくスイッチの操作のみで通電を止めることができることです。スイッチ操作のみであることから、ヒューズと違い部品の交換が不要です。現在ではヒューズよりスイッチタイプのブレーカーが短絡・地絡対策として広く使われています。ただし、あまりに高電流が流れた場合、スイッチ部の端子が焼き付いて動作不良を起こし、通電を止められない可能性がゼロではありません。

日本とは違う海外の短絡・地絡対策

短絡・地絡対策としてヒューズやブレーカーを紹介しました。日本と海外では、安全性と信頼性に対するアプローチが異なることから、ヒューズやブレーカーに対する設計思想の違い、短絡・地絡対策に違いが生じています。

日本と海外で違う電気設計の要求

電気設計をする際には、日本国内と海外で満たすべき規格と要求事項が異なるため、注意が必要です。ヨーロッパ諸国やアメリカでは、電気設計の前提として「機械は壊れるもの、人は間違いを犯すもの」という考え方があり、充電部は全てアースしてしまうことで、万が一の事故も防ぎます。日本の「漏電を防ぐことで万が一の際に重大事故となることを防ぐ」という設計も、一見安全そうに見えますが、漏電ブレーカーの遮断特性以下の漏電が看過されてしまう点において、考え方が大きく異なります。

日本と海外の違いとは?

海外では、確実な電路の遮断という観点から、ヒューズの使用が未だに根強く残っています。それに対して、日本国内では、ブレーカーの信頼性が向上したこともあり、交換が必要なヒューズよりもブレーカーを使用することが多くなっています。

しかし、日本国内で広く使用されるブレーカーの仕様は、ヨーロッパやアメリカでは感電保護として認められていません。日本国内規格のJISと国際規格のIECで接地に対する概念が異なるためです。日本では接地に対し抵抗値を設定することで、短絡・地絡による損傷などの災害を防止しています。一方で、IECでは人体に危険がおよぶ接触電圧が発生しないようなシステムを設計しています。

海外規格を把握しておくことは

近年の海外製品の増加から、日本国内で設計をしていても海外規格に適応した電気設計を行う機会は多くあります。日本国内の規格を把握しておくことも当然重要ですが、海外の規格について認識しておくと、今後電気設計をする際に大きな武器になるはずです。まずは本記事をきっかけとして、短絡・地絡対策の海外規格について理解を深めてはいかがでしょうか?

 

参考:

リタールの技術ライブラリ
「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」

本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。

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