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    デジタルツインとは?次世代ものづくりにおけるデジタルツイン

    「スマートファクトリー」「インダストリアル・インターネット」といった、次世代のものづくり拠点を実現するための技術として重要視されている、デジタルツイン。デジタルツインは何を可能にし、どのように取り入れられているのでしょうか。製造業にイノベーションをもたらすといわれる、デジタルツインについて解説します。

    製造業に新たな技術

    製造業を変えるといわれる新たな手法、デジタルツインとはどのような技術なのでしょうか。

    デジタルツインとは

    工場や製品に関することなど、現実世界の出来事をデジタル化し、仮想世界にリアルタイムに再現する技術がデジタルツインです。その目的は、現実の工場における理想的な運営・管理の実現にあります。デジタルツインを構築することによって、トラブルを予測し対策を施してダウンタイムをなくしたり、モノの流れを効率化させたりといった物理的なメリットが生まれます。その効果は経営面にもおよび、意思決定の迅速化へとつながるのです。


    具体的には、現実の生産ラインにおける機器や人の動き、製品の保管・入荷・出荷といったプロセスを、デジタル上の双子(ツイン)として再現したシミュレーション空間を構築、コンピュータ上で稼動させます。つまり、製品の設計、生産ラインの流れ、製品の保管方法や倉庫レイアウトなどの変更を検討する際、デジタルツインで事前にシミュレーションが可能となるのです。


    デジタルツインは、製品開発においても非常に有用です。複数の開発プロセス間を行き来する必要がある、設計や仕様の変更について、仮想世界でプロセスの検討を行えるという面で、大変役立っています。情報の共有、意識の標準化を容易にするだけでなく、開発期間の短縮やコスト削減につながり、TTM(Time to Market、商品が市場に出るまでの時間)の面で大きなメリットとなります。


    このようにデジタルツインは、次世代のものづくりにおける重要なコンセプトとして注目を集めています。工場全体をIoT化するスマートファクトリーやインダストリアル・インターネットと並び、第4次産業革命といわれるインダストリー4.0を実現するための、重要な技術と考えられているのです。

    従来のモデリング・シミュレーションとの違い

    仮想的に工程をシミュレーションする取り組みは、以前から存在していました。モデリング・シミュレーションと呼ばれる技術です。この技術とデジタルツインの違いは、その連続性にあります。


    モデリング・シミュレーションはひとつの工程やひとつの部署、ひとつの現象について仮想世界でモデリングし、シミュレーションするものでした。いわゆる「点」でのシミュレーションです。一方、デジタルツインは全体の環境を再現し、連続した時間のなかで動かします。つまり「線」または「面」でのシミュレーションです。


    このように、そのときどきの現象をシミュレートするのではなく、バーチャル環境のなかで同時進行しながら連続的にアップデートしていくのがデジタルツインです。

    制御盤製造4.0

    デジタルツインは何を変えるのか

    デジタルツインは、現実世界・物理空間での動きを仮想世界・デジタル空間でリアルタイムに再現することにより、次のようなことが可能となります。

    • リードタイムの短縮
    • 適正な在庫管理
    • 設計改善によるコストダウン
    • 変化点の把握による原因究明
    • 問題の波及範囲の予測

    デジタルツインは現実にある「製品」や「機械」といった物理的なものだけでなく、開発・製造・運搬といったプロセスをバーチャル化して再現、シミュレートします。このシミュレーション結果を現実世界に反映させることにより、効率的な生産を実現する技術なのです。

    ※「デジタルツイン」環境を使った効率的な制御盤の設計製造方法(リタール×EPLAN)

    デジタルツインへの取り組み

    世界的にデジタルツイン技術をけん引しているのは、ゼネラル・エレクトリック社(以下GE)、シーメンス社(以下シーメンス)の2つの企業です。


    GEは同社内に点在していたデジタル関連機能を集約し、新たに「GEデジタル」を発足、同社が取り組むデジタルツインの形がどのようなものか説明しています。
    これによると、GEが取り組むデジタルツインは、製造業のデータサイエンスに存在する3つの領域を支えるものだとしています。その3つとは、「一般的な法則に基づく現象への理解力」、「専門領域で蓄えられた経験や知識」、「データを蓄積し運用するテクニック」です。
    これら3領域を複合的に運用するうえで、デジタルツインは、機器ごと、プロセスごとに調整できる再現可能なテンプレートとして理想的な技術だとしています。


    一方シーメンスは、デジタルツインを3つのプロセスに分けてとらえ、同時に活用していくことで総合的な効果を発揮するとしています。
    まず、製品企画においてユーザーのニーズや活用シーンなどを仮想空間で描く「デジタルプロダクトツイン」。次に、生産段階での設備情報や製品情報を仮想空間で描く「デジタルプロダクションツイン」。最後に、製品がどのような使われ方をしているのかを検証する「デジタルパフォーマンスツイン」です。
    これら3つのデジタルツインがシミュレーション・ソリューションとして循環することにより、設計に柔軟性を与え、生産工程の最適化につながると説明しています。


    また、データベース管理システムで名高いオラクル社も、デジタルツインの分野に名乗りを上げ注目を集めました。GEやシーメンスは産業機器メーカーとしての観点から、デジタルツインに取り組んでいます。一方でオラクルは、得意とするビジネス・ソフトウェア開発の面からデジタルツインのコンセプトに取り組み、動向が注目されています。

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    デジタルツインがもたらす製造業の変革

    このように、デジタルツインは新たな製造業の形をつくると期待されています。現実世界の双子を仮想世界に再現し、総合的な工場運営の最適化を目的とするこの技術が、新たなビジネスモデルを生み、製造業に大きな変革をもたらす日が来るかもしれません。今後、デジタルツインの開発に参入する企業が、新たに登場することも予想されます。世界の製造業、デジタル産業が、デジタルツインに注目しています。

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    参考: