工作機械の変遷とIoT化

少子高齢化により労働人口が減少傾向にある現在、女性・高齢者・外国人など多様な人材の確保が急務となっています。そのなかで製造業においては、工作機械の進化により工場の省人化が進みました。機械技術の進歩と共に、操作方法の簡略化とマニュアル整備が求められており、ヒューマンエラー防止や稼働停止時間の削減を目指してIoTを導入する企業も増えています。そのなかからいくつかの事例を見て、今後の展望を探ってみましょう。

工作機械の変遷

モノづくりの基礎といわれる工作機械。現在使用されている工作機械や加工機は、その業務内容によって多岐にわたります。どのような種類があり、どのような変遷を経て現在に至るのか、その一部を見てみましょう。

NC旋盤

金属加工を伴う業種において、必ずといっていいほど耳にする「NC旋盤」という工作機械。NCとはNumerically Controlの略で、数値制御を意味します。
工作物を回転させ、刃物(バイト)によって切削することにより造形する旋盤は古くから存在しましたが、NC旋盤が登場したのは1950年代のことです。それまで手作業で調整していた切削の位置や深さをコンピューターで数値制御することにより、正確で同一品質のものを大量生産できるようになりました。
現在では機械的な構造が進化する一方で、コンピューター一体式のCNC旋盤が主流となり、制御する側のプログラムも進化し続けています。一度工作物をセットすると、複数のバイトを自動で交換しながら加工し、工作物の搬入出、洗浄、計測といった工程まで自動で行うものも登場しています。

NCフライス盤

こちらは旋盤と違い、刃物(エンドミル)を定位置で回転させながら、加工物を2次元的に移動させて切削加工を行う構造になっています。NCフライス盤が登場したのは同様に1950年代で、NC旋盤と同様に加工精度が大幅に向上し工業の発展に大きく貢献しました。

マシニングセンター

マシニングセンターは上記のNCフライス盤がさらに発展し、工具自動交換装置(ATC)(Automatic Tool Changer)を備えたものを指します。マシニングセンターはMCと略して表記されます。従来人の手で行われていた切削工具の交換作業を、コンピューター制御で自動化したことにより、種類の異なる加工を連続して行えるようになったため、生産効率が大幅に向上しました。
現在ではモノづくりの根幹を担うようになり、今後さらにMCは進化を続けると予想されます。ドリリングやタッピングなど、旋盤でしかできなかった加工、粉末床溶融結合と指向性エネルギー堆積による積層造形や、摩擦撹拌接合による異種金属同士の接合作業、研削加工およびホーニング加工、レーザー加工など、複合作業が可能なものが次々と登場しています。
また複雑な形状も可能とするため、これまでの直進3軸による移動から、旋回2軸を加えて、工具を自由に傾けることが可能になった5軸制御MCが登場し、さらに加工の幅が広がりました。
機能の複雑化と同時に制御も複雑化するため、知能化技術の進化も必要とされています。熱変形や幾何誤差の補正、最適な切削条件の探索と調整など、機械的に抑えられていたMCの性能を、最大限に発揮するための技術進化が求められています。また複雑化した制御をオペレータに伝えるためのUI(ユーザーインターフェース)についても、大きな進歩が見られます。

放電加工機

放電加工機も製品化されたのは1950年前後となります。刃物によって切削するNC旋盤やマシニングセンターに比べ、加工に時間がかかりますが、それらでは加工が困難な複雑な形状を彫り込むときや、硬い金属に加工するときに用いられます。
輪郭加工が得意なワイヤ放電加工機、底付き加工が可能な形彫放電加工機などに区別されます。

工作機械のIoT化のメリット

近年は工作機械の分野においても、各種データの一元管理やIoT化が注目されています。工作機械がIoT化することにより得られるメリットとしては、工場内におけるダウンタイム(稼働停止時間)の削減、工程のムダ取り、機材のメンテナンス性向上や不良率の削減など、多くの可能性があります。

インダストリー4.0

「スマートファクトリーの実現」を掲げ、ドイツ政府が主導している製造業におけるイノベーション・プロジェクト「インダストリー4.0」。工場を中心としてあらゆるモノやサービスがデータ化され、インターネットと連携することにより、新しい価値を生み出し、ビジネスモデルの革新を目指したものです。
スマートファクトリーとは、直訳するとスマート化された工場、つまり工場自体がIoT化したものを意味します。工場内のさまざまな設備や検知器などをインターネットに接続 、行程や作業の状態、品質の管理、モノの移動状況などあらゆる情報を「見える化」し、データハンドリングしてアウトプット、設備と設備、設備と人が協調して動作・行動することにより実現するとされます。
具体的には、柔軟かつ高度に統合された自律的な行程管理、工作機械や治具などの最適化、受注や開発、製造から廃棄までの一貫した情報をデータ化し、生産現場において最適化するエンジニアリング能力、膨大な情報をコントロールするシステム基盤としてのソフトウェアなどが、スマートファクトリー実現の鍵を握っていると分析できます。
ドイツ政府は、このスマートファクトリーが普及し、インダストリー4.0の理念が実現した状態を、第4の産業革命と呼んでいます。

事例紹介

海外の企業におけるIoT化やスマートファクトリーの事例をご紹介します。

メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)/ドイツ

インダストリー4.0を提唱するドイツにおいて、先進企業として知られるだけあり、かなり早い段階でスマートファクトリーの運用を開始しています。
工場のあらゆる機器にセンサーを取り付け、集めたデータを分析、能率や行程の進捗、設備のメンテナンスについて必要性を予測しそれを可視化、不具合発生前に保守点検することで、生産工程におけるムダをコントロールすることを実現しています。製造業におけるIoTの先駆け的な事例としてよく紹介されています。

ゼネラル・エレクトリック(GE)/アメリカ

社内で独自の製造革新プロジェクト「ブリリアント・ファクトリー(Brilliant Factory)」を立ち上げ、IoTによる効率化を目指しています。このプロジェクトは製造現場である工場だけでなく、販売や研究開発などすべてのデータをつなげ、効率化された製造体制を構築することを目的としています。

テスラモーターズ(Tesra Motors)/アメリカ

電気自動車の普及促進を推し進めるアメリカで、自動車産業に新規参入を果たして注目を集めました。2017年に稼働を開始したリチウムイオン電池の生産工場は、「ギガファクトリー(Giga Factory)」と呼ばれています。「製造関連IoT技術の塊」といわれる、先進技術を集結させた工場で、まさにスマートファクトリーです。革新的技術により製造工程の自動化を高い次元で実現、生産コストを極限まで削減することに成功しています。

工作機械と工場のIoT化

工作機械の進化、及び設計から製造にわたるデータ管理の一元化に加え、IoTの導入によって、生産効率やメンテナンス性のさらなる向上が図られています。また工作機械だけでなく、工場全体をIoT化し、製造の流れをすべてつなげようとする製造業における革新は、さらに促進されていくと考えられます。工作機械のIoT、インダストリー4.0、スマートファクトリーといった世界の動きに注目しましょう。

参考:

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