人の手に変わり活躍するハンドリングツール

製造業において現場で活躍するハンドリングツール。現在では製造業のみならず広い範囲で活躍し、数多くの種類が存在します。多岐にわたる産業で活用されるハンドリングツールとは何か、種類や用途について、代表的なものをご紹介します。

ハンドリングツールとは

ハンドリングツールという言葉でくくられた道具を指す場合、大きく分けて2種類があります。

ひとつは物理的に対象物を運搬する手助けをする道具。この場合の「ハンドリング」は、人やロボットが、モノをつかんで「移動」させることを意味します。身近なものでは、私たちが日常使用している箸やフォーク、スプーンなども、広い意味ではハンドリングツールと呼べます。

もうひとつはデータを分析し傾向を把握、関連付け、並べ替え、結合、重複の削除などを行う処理のこと。正確にはデータハンドリングツールといいます。この場合の「ハンドリング」は「処理」という意味で使われます。Microsoft OfficeのExcelやAccessなどソフトウェアの一部機能も、データハンドリングツールといえます。

今回は前者、モノを物理的に運搬する手助けをする道具としてのハンドリングツールをご紹介します。

精密機械のハンドリングツール

精密機械・精密部品の製造分野では、多種類のハンドリングツールが活躍しています。

真空ピンセット

真空ピンセットとは、微小な精密部品などを傷つけることなく、正確かつ容易にハンドリングすることができる、バキューム式のピックアップツールです。
細くなった爪先で挟む一般的な金属製ピンセットとは大きく異なる形状で、棒状のグリップ部分を握り、先端の吸着パッドで対象物を吸い付けて持ち上げるペンシル型が広く普及しています。操作法や持ち方は、バキュームの方式によって異なり、有線式卓上型、充電式携帯型、乾電池式携帯型といった電動タイプや、手動式ペン型、手動式ピストン型、手動式バルブバキューム型などの動力源を必要としないタイプもあります。
また半導体素子製造の分野においては、半導体の基盤(基板)材料となるウエハをハンドリングするための専用真空ピンセットも、多く用いられています。

非接触型ハンドリングツール

真空ピンセットは、先端の吸着パッドやノズル部分が対象物に接しています。これに対し、非接触型ハンドリングツールとは、その名のとおり対象物と接触しない、または強く密着しないタイプの道具を指します。ベルヌーイの定理を応用し、流体が流れるとその流線上で静圧が低下することにより圧力差が生じ、負圧によって物が引きつけられる、という原理を用いてハンドリングするものが主流となっています。このタイプは、ツールと対象物が微小なすき間を維持した状態でハンドリングできるため、対象物に負荷を与えることなく運搬することが可能です。

マイクロ・パーツ・ハンドリングシステム

マイクロ・パーツ・ハンドリングシステムは、株式会社森精機製作所(現社名:DMG森精機株式会社)が入曽精密、微細工房、東京大学と共同で開発したモニター一体式ハンドリングツールで、1mm以下の微細部品の組み立てや搬送が可能です。
この装置は、非常に微細な部品でも取り扱うことが可能で、作業者はCCDカメラ2台によって映し出された対象物の拡大映像を見ながら作業します。16個の可動軸を備えるマイクロハンドを操作し、対象物をつまんで動かす方法が採用され、手作業のような感覚で搬送や組み立て作業が可能となっています。

重量物のハンドリングツール

ハンドリングツールは重量物の持ち上げ、運搬などの作業においても活躍しています。重量物向けハンドリングツールの活用は、繰り返し作業の省力化、省時間化につながり、人力作業では非効率、体への負担が大きいなどの問題を解決します。

スプリングバランサー

バランサーはその名のとおり、バランスを取る、対象物をその位置や高さで維持する役目をします。そのなかでもスプリングバランサーは比較的軽量のモノが対象で、主に工具を吊り下げるのに用いられることが多く、その体感重量をゼロに近づけ作業者の負担を減らします。

アーム式バランサー

アーム式バランサーはアームを兼ね備えたバランサーで、対象物を一定範囲に移動できるというメリットがあります。
対象物をつかむ部分は、作業内容や対象物の形状に合わせ、さまざまな形状をしています。主に重量のある荷をパレットへ積み下ろししたり、小範囲での運搬をしたりという場面で活躍します。空圧式タイプ、電動式タイプなどがあります。

ハンドクレーンなど

ハンドクレーンはアーム式バランサーを含む場合もありますが、一般的には、対象物の上下移動は電動や油圧の力で行い、並行移動・旋回移動は人力によるものを指します。こちらも重量のある荷を吊り上げ、小範囲の移動について省力化することができます。吊り上げるのではなく、下から持ち上げる構造になっているものは、一般的にハンドリフトと呼ばれます。

アシストスーツ

近年研究開発が進んでいるのが、アシストスーツです。人間がロボットを着用するウェアラブルロボットもそのひとつです。
これまでご紹介したものは、対象物をつかんだり吊ったり持ち上げたりする部分がツール側にありましたが、アシストスーツは人間の手を使うものも多くあります。これにより農業や介護の分野においてもその実用性が期待され、すでに一部で実用化されています。また製造業や運送業においては、つかむ部分もツール化された、さらに重量のあるものも持ち上げられるアシストスーツも開発されています。
今後急速な市場拡大が予測されるアシストスーツですが、まだ開発がはじまって日も浅く、主に価格面の課題をどう克服していくかが普及への鍵になると予想されます。また連続稼働時間や限界能力についても、今後さらに研究を重ねる必要があるといわれています。

微小部品から重量物まで

今回ご紹介した、人間に変わりモノを運搬するハンドリングツール。微小部品から重量物までさまざまな物体の運搬を行い、さらに製造業だけではなく運送業や農業、介護の分野でも注目を集めています。業務や対象物に合わせたハンドリングツールを活用し、製品品質を維持するだけでなく、省力化、省時間化につなげ業務の効率化を図りましょう。

参考:

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