工場などにおけるダイバーシティの推進

少子高齢化により労働人口が減少傾向にある現在、女性・高齢者・外国人など多様な人材の確保が急務です。実際にダイバーシティを実践している企業での事例を紹介しながら、今後の展望を探ります。

製造業現場の人材不足について

いわゆる団塊の世代が65歳に達して退職の時期を迎えたことや、少子化の影響により、生産活動の中核をなす生産年齢人口(15歳から64歳の人口)は急速に減少しています。政府の統計によれば、生産年齢人口は1995年の8,700万人をピークに、2016年には7,600万人にまで減少しました。さらに今後、出生数などに大きな変化がなければ、2025年には7,000万人、2050年には5,000万人にまで減少すると考えられています。一方で、平均寿命の上昇などにより高齢者の数も増えており、2025年ごろには人口の3割が65歳以上の高齢者になるとみられています。減り続ける生産年齢人口で高齢化社会を支えることになり、製造業を含む産業界全体で人材が不足すると予想されています。

ダイバーシティとは

ダイバーシティとは多様性のこと。ビジネスにおいては、性別や国籍、宗教や嗜好などにとらわれず、多様な人材を活用することで経営的な強みにしようという考え方のことです。


生産年齢人口の減少による人材不足を補うために、女性や外国人、障がい者などの採用が進められるほか、学歴や専攻を超えての採用が活発になってきています。またフレックス勤務やテレワーク、男性社員の育児休暇など、従来にはなかった多様な勤務形態の導入も進みました。その結果、学歴や家族構成の似通った男性社員ばかりの時代とは異なり、多様性に富んだバックグラウンドを持ち、文化や考え方などが異なる人材も多く企業に集まるようになりました。このような多様な人材を活用するため、企業にはさまざまな立場への理解や配慮が求められます。例えば、個々の事情に合わせた柔軟な勤務体制の許可、LGBTに代表されるような異なる性的嗜好への理解、宗教による食習慣の違いへの配慮などです。


ひとつの価値観によってつくられるサービスよりも、複数の価値観や複数の視点からつくられたサービスのほうが、多様な消費者に支持される。また従来にはなかったような斬新なアイデアの発想にもつながる。そのために社内にも多様な人材を取り入れ、上手に活用しようというのがダイバーシティの基本的な考え方になります。

ダイバーシティ推進の事例

それでは、ダイバーシティの推進に向けて実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。経済同好会が2016年に行った調査によると、調査対象となった企業のうち74.0%の企業で、女性の登用や活用が経営指針や経営計画などに明記されています。また71.8%の企業が、女性の登用や活用を推進する組織を設置しており、実現に向けた取り組みが進められていることがわかります。


一方で外国籍の従業員を雇用する企業も増えてきています。外国人の新卒採用に関しては63.3%の企業が取り組んでおり、キャリア採用は51.3%となっています。また取締役や執行役員、監査役などに外国籍の人材を配置し多角的な視点からの経営を行おうとしている企業も多いようです。


ほかには障がい者の雇用や、長時間労働の抑制など、さまざまな事情を抱えた人材が働きやすい会社をつくる取り組みなどが広く行われているようです。従来は一部の職人しかできなかった作業を、最新の機械を導入することで誰でも行えるようにしたり、構内の表示に多言語やピクトグラム(絵や記号による標識)を使用すること、非常時のアナウンスを多言語で行うことなどが挙げられています。


企業の実例をみてみましょう。例えば積水ハウス株式会社では「住宅に住むユーザーの半数は女性である」という考えから、住まいづくりのプロセスに女性の視点を反映させるために、女性活躍推進グループを設置しています。またIT化を進めて情報を一元管理することや、タブレットやアプリを活用して外出先から情報を管理できるようにすることで、長時間労働を改善。育児や介護中の社員は必要に応じて在宅勤務を可能にするなど、多様なバックグラウンドに対する配慮を行っています。

推進していくための課題と展望

ダイバーシティが進む一方で、課題も明らかになっています。特にニュースなどでよく取り上げられるのは、女性管理職比率の低さです。原因として企業が挙げるのは、先に立つ女性のロールモデルが少ないことや、女性の採用数が少数であったために管理職候補者の数が乏しいことなど、過渡期であるがゆえの課題が多いようです。こうした問題は、企業の枠を超えて女性社員同士が交流の機会を持ったり、今後女性の採用を増やしていったりするなどで改善を試みることができるでしょう。

一方で、「マミートラック」などの言葉に代表されるように、女性社員が育児を優先した働き方を続けるうちに、経営的視点が養われる機会を逃してしまうこともあります。出産後も仕事を続ける女性自身やその周囲にも、男性主体の時代にはなかった新たな課題が指摘されているのです。前章で触れた積水ハウス株式会社では、このような課題の対策として「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」を開校、女性管理職候補が2 年間にわたるカリキュラムを通じて、経営スキルなどを体系的に学べる機会を設けています。
積水ハウス株式会社の事例のように、今ある人材に何を加えればより一層の活用ができるかを探ることが、ダイバーシティ推進の鍵であるといえるでしょう。

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